自主練メニュー作る時に絶対に守るべき6つのルール
天才と凡人はこう違う!早熟タイプ・本当の天才・凡人のトレーニング戦略
rize-ac5100
1.はじめに:天才と凡人の違いって何だろう?
ジュニアスポーツの現場では、「同年代とは思えないほどすごい!」と注目を集める選手が“天才”と呼ばれることがあります。しかし、その“天才”が本当に先天的な能力をフルスペックで持っているのか、それとも成長段階が早い(早熟タイプ)だけなのかは、意外と見極めが難しいものです。
一方で、大半の選手は“凡人”として地道に基礎を固め、少しずつ実力を積み上げていく必要があります。さらに、成長期は個人差が非常に大きいため、「タイミングを間違えたトレーニング」をしてしまうと、大きなケガのリスクや伸び悩みにもつながりかねません。
日本のスポーツ制度はいま過渡期にあるとはいえ、中学3年間、高校3年間、大学4年間という枠組みが続いているため、指導者や練習環境が変わるタイミングで、自分に合わない練習が取り入れられやすくなる可能性もあります。これを防ぐためには、選手自身と指導者がよく話し合い、自己のタイプに適したトレーニングを選択しつつ、チーム練習以外でも各自がタイプ別の練習を継続することが肝要です。
本稿では、
1. 早熟タイプ
2. 本当の天才
3. 凡人
という3つのタイプが、それぞれどんな練習に取り組むべきかを比較しながら解説します。特に、成長段階に合ったトレーニングと、必要に応じて「普遍的な部分では型にはまる」(正しいフォームや基礎動作を身につける)ことの重要性を意識して読んでみてください。
2.「型」とは何か? ~人間の身体構造に基づく普遍的な部分~
ここで言う「型」とは、人間の身体構造上、ある程度“普遍的”に正解とされる動作やフォームを指しています。「型にはめる」というと、選手個々の特性を無視して指導者の理想を押し付けるかのような印象を持つ方もいるかも知れませんが、本来「型」とは実戦前に習得すべき基礎を指しています。万人に共通する普遍的な基礎と言えます。
たとえば、膝がつま先より大きく前に出る姿勢では、太ももの前面(大腿四頭筋)が優位に働きます。
しかし、陸上競技の多くの場面(ダッシュやジャンプなど)では、主に臀筋やハムストリングスを優位に使ってパワーを生み出すフォームが望ましいため、膝を過度に前へ出さない姿勢を習得する必要があります。
このように、身体の構造に沿った基本的なフォーム──すなわち「型」を身につけることは、ケガのリスクを減らし、効率的な動作につなげるためにも非常に重要です。
3.多くの“天才”は「早熟タイプ」なだけ?
早熟タイプとは、身体的な成長段階が人より早く進んでいるタイプの選手のこと。身長や筋力が中学生の段階で他の子よりも一回り大きかったり、身体がすでに“ほぼ大人体型”に近いケースもあります。周囲がまだ子ども体型なのに対して、自分だけが大人に近い身体を持つため、競技パフォーマンスで圧倒的な優位を発揮しやすく、“天才”と呼ばれがちです。
ただし、「早熟タイプは天才かのように見えているだけ」という場合も多いので、そこを勘違いしないようにしましょう。身体が先に成長した分だけ結果が出ているのは事実ですが、長期的に見れば基礎練習(型の習得)を大切にする点は、むしろ凡人と同じなのです。ここをおろそかにすると、周囲の選手が成長してきたときに伸び悩むリスクが高まります。
メリット:
早い段階で身体が出来上がっているため、一歩先の筋力トレーニング・フィジカルトレーニングなどにもチャレンジしやすい
デメリット:
周りの成長が追いついてきたとき、天才的な突出感が一気に薄れてしまう可能性がある
才能を持っているかが分かっちゃう!?遺伝子検査キット
リンク
4.本当の天才とは?
“本当の天才”と言える選手は、生まれ持ったフィジカル・運動センス・理解力・身体操作能力が非常に高く、さらに努力を続けるメンタルを持ち合わせています。具体的には、
・感覚が非常に鋭い
わずかなフォームのズレや力の伝わり方を一瞬で察知でき、自分の動きを“意図通り”に再現できる。
・身体操作のレベルが高いため、基礎(型)をすぐ身につけ、難易度の高いスキル習得に時間を割ける
競技特有の応用ドリルや高度なテクニック練習にいち早く取り掛かることが可能。
・怪我のリスクを見落としがちなので注意
高度な動きをこなしやすい反面、フィジカル不足や急激な成長による故障を招く危険もある。実は“天才”ほど、成長段階に応じた筋力・フィジカルトレーニングを計画的に取り入れる必要がある。
実際に、世界のトップレベルで活躍する選手には、こうした“本当の天才”が多いと言われます。しかし、才能を活かしきれるかどうかは、正しい努力や怪我の予防にどれだけ真剣に取り組むかにかかっています。
5.凡人の特徴:基礎を徹底し、成長段階を逃さない
大多数を占める凡人タイプは、天才たちのように“感覚だけで高度な動き”をすぐマスターできるわけではありません。そこで重要なのが、徹底した基礎づくりと「型」の習得です。ここで言う“基礎”とは、競技固有の技術以前に必要な身体操作の土台を固めること。たとえば、
・体幹の安定、柔軟性、バランス感覚、リズム・テンポのコントロールなど
・正しい姿勢や重心移動、関節の使い方(いわゆる“型”の習得)
・一連の動きを細かいステップに分割し、1つひとつ身体に覚えさせる
こうした土台をしっかり身につけていくことで、長いスパンで見たときに大きく飛躍できる可能性が高まります。
また、本当の天才や早熟タイプに大きく差をつけられてしまい、自分はダメなんじゃないかと思いがちですが、必要なトレーニングを地道に積み上げているうちに、身体の成長そのものは早熟タイプに追いつくことが多いです。さらに、折れない心と戦略的思考があれば、本当の天才とも十分に渡り合える可能性はあります。凡人こそ、地道な努力を続けることがジュニア期における“差”を小さくし、最終的には逆転も狙える大きな武器となるでしょう。
6.タイプ別:どんなトレーニングが効果的?
6-1.早熟タイプ
(1) 実は“天才に見えているだけ”なので基礎の徹底が重要
身体が先に出来上がっているため結果が出ているケースが多い。必ず基礎練習やフォームづくり(型)を疎かにせず、凡人と同様のプロセスを踏むこと。
(2) 成長段階にあった「周囲より一歩先のトレーニング」を追加
普通のジュニア世代より少し負荷の高い筋力トレーニング・フィジカルトレーニングや、専門的な動きのドリルを取り入れ、アドバンテージを活かす。ただし、オーバーワークには要注意。
(3) 周囲が追いついてくるタイミングを想定する
早熟の優位が薄れる時期は必ず来る。そのときに焦らないよう、基礎と応用をバランス良く積んでおこう。
6-2.本当の天才
(1) 難易度の高いスキルに集中しやすいが、フィジカル不足に注意
感覚や身体操作に優れているため高度なテクニックを早期に習得しやすいが、成長段階に見合った筋力・フィジカルトレーニングをなおざりにすると怪我に直結する。
(2) 弱点の洗い出しと克服
得意分野だけ伸ばしていると、苦手な部分の遅れが後々大きな障害になる。あえて苦手を掘り起こし、総合力を高める取り組みが重要。
(3) 成長期の変化を常にモニターする
思春期・成長期の身体は急激に変化する可能性がある。定期的に体調やコンディションをチェックし、練習内容を柔軟に調整する。
6-3.凡人
(1) 基礎トレーニングを分割し、身体操作の土台を徹底的に固める
姿勢・体幹・バランス・リズムなど、競技以前の身体づくりを細かく段階的に練習する。大器晩成型を目指すなら、ここにじっくり時間をかけよう。
(2) 競技の基礎よりも身体操作の基礎を優先し、“型”を覚える
例えば短距離の練習をメインにしながらも、ジャンプ系やストレッチ、筋力トレーニング・フィジカルトレーニングなど汎用的な身体操作スキルを高める。天才や早熟タイプよりも基礎に徹底的に時間を使うことで、長期的に大きく伸びる可能性が出てくる。
(3) 成長段階に合わせた負荷の調整
身体が急に伸びたり、体格が変化するタイミングでは新しい刺激を加えるチャンス。逆に伸び悩む時期は、型の再確認や細部の調整を行い、地道に次のブレイクスルーを待つ。
伸びるトレーニングとは?
動きの「キレ」とは?
7.ジュニア期におけるタイプの差は“正しい努力”で埋まっていく
実は、早熟タイプ・本当の天才・凡人のいずれのタイプでも、正しい努力を積み重ねていけばジュニア期における差は意外と目立たなくなるものです。むしろ、中学・高校・大学とステージが進むにつれ、新しい指導者やチーム方針が加わることで、選手個々の特徴が十分に活かされないまま練習が進んでしまうリスクのほうが大きいかもしれません。
そうした状況を防ぐためにも、選手自身が自分のタイプを理解し、コーチやチームメイトとよく話し合い、必要なら別メニューや補強練習を並行して継続することが大切です。せっかく身につけた“型”や基礎が崩れてしまわないよう、地道にアップデートしていきましょう。
8.まとめ:成長段階を見極めて、タイプに合った練習を
1.早熟タイプ
・実は“天才に見えているだけ”のケースが多いので、基礎(型)の徹底がないと後々伸び悩む
・成長段階に応じて少し負荷の高いトレーニングを導入し、優位性を活かす
・周囲が追い上げてきても対応できるように、基礎と応用をバランスよく磨く
2.本当の天才
・高度なスキルを早期に習得できるが、フィジカル不足になりやすいので怪我に注意
・成長段階を見極めた筋力トレーニング・フィジカルトレーニングを導入し、ケガ予防と総合力アップに努める
・苦手克服と柔軟な対応でさらなる高みを目指す
3.凡人
・身体操作の土台を細かく積み上げ、普遍的な基礎(型)にじっくり時間をかける
・成長期ごとに新たな刺激を加え、ゆっくりでも確実にレベルアップ
・本当の天才や早熟タイプに大きく差をつけられても、正しい努力を地道に続ければ身体の成長で追いつき、折れない心と戦略的思考があれば逆転の可能性も十分にある
9.陸上界で数多くの“消えていく天才”を見てきて思うこと
私(筆者)は長く陸上界に身を置き、優秀な選手が道半ばで消えていくところを数多く見てきました。陸上に興味がなくなったり、厳しい競争の世界につかれて引退する選手も多いですが、適切なトレーニングを行うことが難しくなり、記録が伸びずに消えていく選手も珍しくありません。
たとえば、中学または高校時代に基礎を重んじる指導者のもとで徹底的に正しいトレーニングを積み、全国で好成績を残した選手がいたとします。才能はそこまで突出していないものの、地道な努力によって“天才と渡り合える”レベルまで実力を引き上げたタイプです。周りの人から見ると「本当の天才」に見えるかもしれませんが、実はちょっとだけ能力が高い凡人、言うなれば「作られた天才」。全国で活躍するとたくさんの高校または大学からスカウトが来て、強豪校に進学するケースが多いのですが、そこには“本当の天才”たちが集まっており、天才型に適したトレーニングが展開されていることも少なくありません。
しかし、この“作られた天才”が、過去に自分の実力を支えていた基礎トレーニングを継続しなかったり、そもそも自分がなぜ結果を出せたのか(自分の才能や努力の仕方など)を理解していないと、環境が変わったタイミングで一気に記録が伸び悩むことがあります。逆に、自己分析をきちんとしていて、自分に合ったトレーニングがわかっている選手は、ステージが変わっても自主的に必要な練習を続けたり、監督やコーチに相談して最適なメニューを組み合わせたりしていけるのです。
私自身、できるだけ多くの選手が自分自身と向き合いながら陸上競技を続け、その中で成長や充実感を得てほしいと心から願っています。自分はどのタイプに近いのか、どんな練習が必要なのか、なぜ結果が出せているのか──これらを意識して振り返る習慣を身につけるだけでも、陸上人生は大きく変わるはずです。ぜひ、今後の競技生活に役立ててください。
試合の日に絶好調を持ってくるには
スタートに必要なたった2つの力
試合当日に何をすべきか
広告
ABOUT ME